関口雄飛とストフェル・バンドーンは日本で出会う、あるいは奇妙で魅惑的な、僕たちのスーパーフォーミュラ

CHAPTER 1

2016年9月25日に決勝が行われるスーパーフォーミュラ(SF)第6戦を前にして、観客がレースへと寄せる期待はさほど大きいものではなかっただろう。はたしておもしろいレースになるのだろうかという疑問はあって当然だった。まずもって、SFそのものが全体的にレース中の順位変動が少ないシリーズという前提がある。今のF1のように年間を通して1チームが独走することこそないものの、週末単位で見ると意外なほど上位の順位が固定されたまま終わる――速さを見つけたチームはたいてい日曜日の夕方まで速い――傾向が強い。今季ここまで、ややこしい展開になったのは7月の富士と9月の岡山レース2くらいで、それ以外の開催ではどこも予選3位以内のドライバーのうち2人は表彰台に登っている。6戦のうち5戦はホールショットを決めたドライバーがそのまま優勝した。もとよりSFとはそういうものだ。使用される車輌SF14は随所に工夫が凝らされ、コーナリング速度だけならF1を凌ぐとさえ言われるほど機敏な挙動を見せつつ、現代の高位フォーミュラカーとしては追い抜きもしやすいと評価される優れた車だが、そうはいっても空力依存的な設計の宿命から逃れられるわけもなく、オーバーテイクシステムの効果も限定的のため、当初喧伝されたほど至るところで順位が逆転する場面を演出してくれるほどの舞台装置ではないことは知れ渡っている(もちろんこれは「速い車ほど最初から前にいる確率が高い」というレースの構造的な本質にもよる)し、まして肝心の舞台のほうが直線は短くコース幅も狭いスポーツランドSUGOだ。派手な劇が繰り広げられる展開を望んでも詮ない。シーズンも最終盤に差し掛かった選手権の帰趨に興味を向けるにしても、それはサーキットの上に現れる戦いとはまた文脈が違う。どこからともなく現れてレースに波瀾を巻き起こす「菅生の魔物」もどうやら最近はSUPER GTのほうにご執心のようである。数台がスピンしてリタイヤする程度の揺らぎや、菅生らしくセーフティカーが導入される事態くらいはありえても、結局のところは今回も1周目のターン1を制した者がそのまま優勝するのだろう。68周のレースはじゅうぶん長い。だがチェッカー・フラッグが振られるのが7周目だろうと41周目だろうと、さして順位は変わらないはずだ。
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