【2017.5.28】
インディカー・シリーズ第6戦 第101回インディアナポリス500マイル
死闘の果てに、佐藤琢磨はインディアナポリス500マイルを勝とうとしていた。199周目のターン1である。3番手の彼は前をゆくダリオ・フランキッティがチームメイトのリーダーを交わしていく動きに乗じてインサイドのわずかな空間を突き、盤石の1-2態勢を築いていたように見えたチップ・ガナッシ・レーシングの隊列を分断した。最内のラインを奪われたスコット・ディクソンは失速し、瞬く間に勝機を失ってしまう。対する佐藤の勢いはまったく衰えていない。ターン2で差を詰め、バックストレートでさらに近づく。ターン3の立ち上がりは完璧で、相手よりわずかに小さく回って一瞬早く加速を開始した。ターン4を抜けた先のホームストレートはこのとき向かい風だった。空気の壁に阻まれて伸びを欠く赤いチップ・ガナッシに襲いかかる。ターン1はすぐそこに迫り、フランキッティはドアを閉めきれず車を外に振る。佐藤はその空間に飛び込んだ。優位は圧倒的に内側にある。だれもが最終周での逆転を確信した瞬間だった。
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