コルトン・ハータはキャリアの要を手に入れた

【2019.6.23】
インディカー・シリーズ第10戦 REVグランプリ
(ロード・アメリカ)

ロード・アメリカの開幕を告げるグリーン・フラッグが振られるやいなや、アレキサンダー・ロッシがいちどコルトン・ハータの真後ろに潜り込み、須臾のドラフティングののちにふたたび打ち出されたように飛び出すと、ターン1の進入ではすでにフロントノーズの先端がわずかながら先んじているのだった。外から被せられたせいで立ち上がりのラインを封じられ十分な加速のための空間を失ったハータはロッシとの速度差に少しずつ後れを取る。その先に広がる長い直線と、コーナーとも言えない全開区間のターン2で、それでも内側のラインを維持してかすかに差を縮め、ターン3へのブレーキングに希望を託したものの、相手の深い飛び込みを前に為す術はもうなかった。立ち上がりのトラクションはロッシがはるかに優れ、2台は瞬く間に遠ざかっていく。ターン4に至って佐藤琢磨がウィル・パワーの懐に飛び込んで鮮やかなパッシングを完成させ、と同時に後方でスコット・ディクソンがまたもやスピンを喫した場面に注目が移ろったとき、すでに先頭の争いは決着し、2勝目を目論んだハータの野望は潰えていた。レースはロッシが支配する。サーキット・オブ・ジ・アメリカズでの最年少優勝に続き、最年少ポール・ポジション記録をも更新した19歳がレースをリードしたのはほんの30秒程度にも満たず、予選での歓喜に反して、とうとう一度も先頭でコントロール・ラインをまたぐ機会はなかったのである。

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あるいはF1であったなら

サーキット・オブ・ジ・アメリカズ

【2019.3.24】
インディカー・シリーズ第2戦 インディカー・クラシック
(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)

2019年のインディカー・シリーズのカレンダーにCOTAと略称されるサーキット・オブ・ジ・アメリカズが加わると報じられたとき、それがインディカーに似合いの舞台であるのかどうか、疑問に思わないではなかった。F1アメリカGPの開催地であるCOTAが、計画のはじまりからF1誘致を大前提として建設された、まさにF1のためのコースであることはよく知られていよう。いまや新規F1サーキット設計のほぼすべてを手がけるヘルマン・ティルケが描いたそのレイアウトは、シルバーストンのマゴッツ-べケッツ-チャペルコーナーと続く高速S字区間、ホッケンハイム後半のスタジアムセクション、イスタンブールのターン8といった世界に名だたるサーキットの名所がモチーフとしてちりばめられた屈指の難コースとして評価が高い。時代の最先端をゆくFIAのグレード1サーキットにふさわしく、広く舗装の施されたランオフエリアが用意されるなど高度な安全性が確保された光景が広がり、インディカーの日常、つまり壁に囲まれた市街地コースや、砂と芝生でコースから外れた車を捕まえる古典的なロードコース、そしてもちろんシンプルな楕円のオーバルコースとは趣を異にしている。米国に位置しながら、極度に欧州化された異質のサーキット。そこでのレースははたしてインディカーたりうるのだろうか。なにせガレージの仕様からして「欧州規格」であり、インディカーは「インディカー・クラシック」と名付けられたシリーズ第2戦の開催にあたって自分たちの用に適うピットとするために仮設の壁を設置する必要に迫られたほどだったのである。

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