
【2023.8.27】
インディカー・シリーズ第15戦 ボンマリート・オートモーティヴ・グループ500
(ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイ)
レースぶりはけっして優れていたとは言えず、むしろ終始劣勢だった中で幸運に見出された勝機を手繰り寄せた薄氷の優勝だったが、とはいえ今年5月、ジョセフ・ニューガーデンは世界最高のレースであるインディアナポリス500のヴィクトリー・レーンに足を踏み入れ、自らのキャリアにほとんど唯一残っていた空白を埋めた。通算29勝、インディ500優勝、2度のシリーズ・チャンピオン。あらゆるタイトルを手中に収め、そして記録上の数字だけでは見えてこない美しい運動の数々をフィールドに刻んできたニューガーデンが、インディカー史を語るうえで欠くべからざる偉大なドライバーであるのは疑いようがない。だが、現に偉大であることを承知のうえでなお、彼がもう少し早く生まれていたとしたら、と仮定を弄してみてはどうだろうか。するとわれわれは、いまよりもっと偉大な歴史を目の当たりにしていたかもしれない。つまりニューガーデンが米国のオープンホイールレースが統合された現代ではなく、おおよそ20年を遡ったころに走っていれば、もしかしたら伝説的な時代の支配者になっていたのではないかと想像するのである。
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